概要
可不 は、KAMITSUBAKI STUDIO が展開する「音楽的同位体」シリーズの第1弾。バーチャルシンガー 花譜 の歌声をもとに開発された合成音声ライブラリ。
2021年7月7日に CeVIO AI 版が発売。ツミキによる《フォニイ》をはじめ、数々のメガヒット曲を生み出し、ボカロシーンを代表する音声ライブラリとなった。
VOICE PROVIDER
花譜 / KAF
SINGING ENGINE
CeVIO AI、のちに Synthesizer V AI も展開
CHARACTER DESIGN
RELEASE
2021年7月7日
デザインと声の位置づけ
PALOW.による白と黄色を軸にしたデザイン、環状の瞳、フード付きの衣装、幾何学的なディテールは、花譜とのつながりを保ちながら、可不を独立した音声キャラクターとして成立させている。
歩み
| 時期 | 出来事 | 内容 |
|---|---|---|
| 2020年10月 | 声質アンケート | 3種類の試作歌唱タイプを公開し、Type B を製品の基礎に決定。 |
| 2020年11月~12月 | 先行カバー | 《雛鳥》《心臓と絡繰》《過去を喰らう》などを公開。 |
| 2021年5月~7月 | 委嘱曲と発売 | 多数のクリエイターが参加する企画を経て、7月7日に正式発売。 |
| その後 | エンジン拡張 | CeVIO AI 版に加え、Synthesizer V AI 版も展開。 |
委嘱曲インデックス
立ち上げ期の曲目を表示
| 日付 | 楽曲 | クリエイター |
|---|---|---|
| 2021年1月9日 | 《ホログラム》 | 一二三 |
| 2021年2月20日 | 《キュートなカノジョ》 | syudou |
| 2021年3月7日 | 《アイスクリーム》 | Guiano |
| 2021年4月10日 | 《レトロポリス》 | R Sound Design |
| 2021年5月1日 | 《花となれ》 | 雄之助 |
| 2021年5月8日 | 《水面下》 | 大沼パセリ |
| 2021年6月5日 | 《フォニイ》 | ツミキ |
| 2021年7月17日 | 《キャットラビング》 | 香椎モイミ |
これらは初期の公式委嘱曲をたどるための索引であり、可不の全作品目録ではない。《フォニイ》《マーシャル・マキシマイザー》《キュートなカノジョ》などを含む、クリエイターによる継続的な作品群こそが可不の活動領域を形づくっている。
公式コンピレーションと命名体系
花譜(KAF)の歌声を音源原型とし、神椿「音楽的同位体」シリーズの第一弾にして、シリーズ中もっとも広く伝播し、中華圏と世界の同人シーンに最も深い影響を与えた声庫である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 初のコンピ | 《KAF+YOU KAFU COMPILATION ALBUM シンメトリー》(2021-11-24) |
| 命名 | 「音源の魔女のコード + YOU」という式を採用、すなわち「花譜(KAF) と あなた」の意 |
| 音源原型 | 花譜(KAF) |
| リリース体系 | KAMITSUBAKI STUDIO 音楽的同位体シリーズ |
命名体系の意味:公式コンピを「X+YOU」と名付けることで、同位体を「道具」ではなく「聴き手とともに創作する相棒」として再定義している。収録曲はいずれも招請または選抜されたクリエイターによるもので、公式と民間の創作生態が直接交差した産物である。
音響エンジンと声庫の仕様
神椿の音楽的同位体プロジェクトは二つのエンジンによる音響アーキテクチャの上に築かれている。それぞれ技術的な狙いが異なる。
| エンジン | 開発 | 技術的特徴 |
|---|---|---|
| CeVIO AI | Techno-Speech | HMM と深層ニューラルネットワーク(DNN)の混合から発展し、人間の歌唱原音にあるビブラート、ブレス、声帯摩擦の微細なノイズといった「不完全だが生命感のある」ディテールを極限まで捉える |
| Synthesizer V AI | Dreamtonics(第五世代) | 全工程を自己回帰型音響モデルで処理し、言語を跨いだ歌唱(日・英・中の自然な遷移)、複数の感情パラメータ(Power / Soft / Clear)のシームレスな変形、高い描画速度と編集性を備える |
二エンジンの意味:CeVIO AI は「人間らしい不完全さの保持」を、Synthesizer V AI は「多言語と高い編集性」を担う。両者が揃うことで、実唱の質感の再現から、世界中のクリエイターによる自由な制作までを一貫してカバーする。
オープン二次創作ライセンスと生態系
神椿は音楽的同位体プロジェクトにおいて、従来の芸能事務所型の閉鎖的な制限を捨て、画期的なオープン二次創作ライセンスの循環を築いた。
- 商用利用のしきい値の開放:同人音楽家が一定の収益上限内で同位体声庫を自由に用いてオリジナル曲を制作し、そのままストリーミング配信できるようにした;
- 公式コンピへの還流と収録:公式コンピレーションの公募を通じて、民間の優れたクリエイターと作品をメジャーの公式アルバムへと取り込み、「民間の創作 → 公式の認証 → さらなる伝播」という正の循環を生んだ;
- 生態系の成果:《キュートなカノジョ》《フォニイ》など現象級の再生数を誇る同人楽曲が生まれ、AI 歌唱が主流ポップカルチャーの中心へと踏み込んだ。
業界的意味:二次創作を厳しく制限する従来のレコード体系に対し、神椿は「声庫」を閉じた資産ではなく生態系への入口として扱った。これが数年で膨大な UGC を蓄積できた根本的な理由である。
現象級二次創作の名曲アーカイブ
可不の声庫は市場投入後ただちに VOCALOID/同人音楽シーンで現象級の爆発を引き起こした。以下はその波を象徴する座標である。
| 曲 | クリエイター | 意義 |
|---|---|---|
| 《キュートなカノジョ》 | syudou | 可不特有の息混じりの声と病みかわいいグルーヴを結びつけ、人気爆発の導火線の一つとなった |
| 《フォニイ》 | ツミキ | 激しいビートの断片とファルセットの転音で、可不の歴史で最も再生・カバーされた代表作の一つとなり、国内外の無数の歌手に歌われた |
| 《マーシャル・マキシマイザー》 | 柊マグネタイト | 超高密度のビートと高速のディクションで、可不の機械的な質感と柔軟さの限界を提示した |
歴史的位置:これらの作品は平成と令和の交代期に生まれ、「AI 歌唱が主流ポップカルチャーの中心へ入った」転換点と広く見なされている。可不は神椿の五つの同位体の中でもっとも知名度が高く、越境的な影響力を持つ。
代表作品と関連項目
シングル一覧を開く
シングル
| リリース日 | タイトル |
|---|---|
| 2010-12-12 | 不可欠 |
| 2020-02-29 | 病名を教えて |
| 2020-12-24 | くるくる |
| 2022-01-29 | メイドインベイビー |
| 2022-05-11 | 夜の自販機 |
| 2022-07-12 | 水面下 (feat. Kafu) |
| 2022-07-12 | 流線形メーデー |
| 2022-07-31 | ようやく君が死んだんだ。 |
| 2022-11-09 | ハロウィン・マスカレイド |
| 2023-02-28 | イーシャンテン・オーバードーズ |
| 2023-03-17 | 生涯、貴方を悔やみます。 |
| 2023-03-23 | ストレイシープ |
| 2023-04-29 | ルムルトル |
| 2023-05-03 | アノニマス |
| 2023-07-21 | スワロー (feat. KAFU) |
| 2023-12-10 | 解/体 |
| 2024-01-08 | おさけを飲んだらくすりが飲めないの唄 (feat. 初音ミク) |
| 2024-02-26 | 模範解答実験室 |
| 2024-04-04 | Voyager |
| 2024-05-31 | 混沌ブギ (Cover) |
| 2024-09-05 | 最期の逢瀬 |
| 2024-10-15 | コぇちっちゃ<てゴ×ンネ |
| 2024-10-22 | 『抱きしめて。』 |
| 2024-12-20 | アット・ザ・電脳シティ(STEAKA Remix) |
| 2025-02-01 | 人間に産まれたから |
| 2025-02-20 | MaDiVA |
| 2025-04-18 | テレパシ (feat. 重音テト) [Cover] |
| 2025-07-11 | Plazma (feat. 重音テト) [TETO with KAFU Cover] |
| 2025-10-05 | IRIS OUT (feat. 重音テト) [Teto Cover] |
| 2025-10-13 | IRIS OUT (KAFU Cover) |
| 2025-10-26 | IRIS OUT (feat. 初音ミク) [Hatsune Miku Cover] |
| 2025-12-17 | モニタリング (feat. 重音テト) [Cover] |
| 2026-05-21 | 痣痣 |
| 2026-07-28 | ゆらゆら |
立ち上げ期の曲目を表示
| 日付 | 楽曲 | クリエイター |
|---|---|---|
| 2021年1月9日 | 《ホログラム》 | 一二三 |
| 2021年2月20日 | 《キュートなカノジョ》 | syudou |
| 2021年3月7日 | 《アイスクリーム》 | Guiano |
| 2021年4月10日 | 《レトロポリス》 | R Sound Design |
| 2021年5月1日 | 《花となれ》 | 雄之助 |
| 2021年5月8日 | 《水面下》 | 大沼パセリ |
| 2021年6月5日 | 《フォニイ》 | ツミキ |
| 2021年7月17日 | 《キャットラビング》 | 香椎モイミ |
プロジェクト内のつながり
可不は音楽的同位体プロジェクトの出発点であり、星界 / SEKAI、裏命 / RIME、狐子 / COKO、羽累 / HARUへと続くクリエイター向けの歌声キャラクター群の基礎になった。
音源の魔女との関係系譜
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 音源原型(テンプレート) | 花譜(KAF) |
| 所属体系 | V.W.P 五人の魔女の同位体マトリクスの一角 |
| 初出形態 | CeVIO AI(のちに Synthesizer V AI 版を追加) |
| 世界観上の位置 | 神椿の「歌曲の特異点」のデジタル側の分身。花譜と同じ「歌の声」の来源を共有する |
命名規則:音楽的同位体の名称は音源の魔女から直接取られている(KAFU←KAF、RIME←RIM、SEKAI←ISEKAIJOUCHO、COKO←KOKO、HARU←HARUSARUHI)。この命名法自体が「同一存在の異なる形態」という設定の核を宣言している。